ちなみに、私の小指を噛んだのは、人ではなく、重量30キロはあろうかという耐火金庫の扉であります。

 この話をすると、職場の人間に、「耐火金庫があるなんて、もしかして資産家?」と、必ず言われたので、一応断っておくと、問題の耐火金庫を購入したのは亡き父で、父は、昭和の人間らしく、それまでの借家住まいから念願の一戸建てを購入した時、早速耐火金庫を設置して不動産の権利書だけでなく、当時の家の設計図や業者との契約書まで大切に入れて保管していた次第。
 その息子は、「書類は焼けても、また再発行してもらえばいいじゃん」というスタンスなので、ほとんど耐火金庫は利用していない。

 それから、もうひとつ断っておくと、この耐火金庫、現在は仰向けの状態で置かれている。というのも、何年か前に家に侵入した間抜けな空き巣が、金目の物が入っていると勘違いし、仰向けにして、高枝ばさみや釘抜きなど、現地調達の工具でえっちらおっちら金庫の扉を力づくで開けに掛かったのだ。空き巣は、努力の甲斐あって、無事耐火金庫の扉をこじ開けることに成功したが、結局金券宝石の類にはありつけず、使い古しの8ミリビデオカメラやノート型パソコンを盗っていった。
 以来、あまりの粗大さに処分することもままならず、そのままの状態で放置してあるという次第。